教養区分のときの話をしようかな(前編・一次試験まで)
「中編・二次試験対策」と、「後編・二次試験当日」も合わせてどうぞ。
1. はじめに
2018年秋、私はある試験を受けておりました。どういう試験かと申しますと、国家公務員試験というやつです。
その中でも、大卒程度(総合職)教養区分(以下「教養区分」と称する)というのを受けていました。
本稿では、私が受験した平成30年度(2018年)の「教養区分」についてどんな対策をしたか、実際どうであったかの体験記を記したいと思います。
また、2020年は様々なイレギュラーな対応となる可能性もありますので、必ずしもこの記事の内容が妥当するものではないものと思っております。このような過去年度のブログも参考にしつつも、臨機応変に対応していただければと思います。
読者層としては、主に現在公務員試験を受けている人・受ける予定の人・興味がある人(あるいは最近の新人がどんな試験で入ってきているのか知りたい官僚の方々)を想定しています。
私が使用した参考書等についても「おすすめ参考書」というコーナーで示していますので、適宜ご覧ください。
2. 教養区分とは
まずそもそも教養区分とは。教養区分の試験は、主に一次試験と二次試験(+民間の英語試験の点数)で決まります。
2.1 一次試験の概要
非常にテクニカルな話から始まり恐縮ですが、一次試験の合格者の決定方法ですが、基礎能力試験の点数のみによって決まります。
- 総合論文試験:与えられた資料を読み、問題に対して自由記述をする論文が二つ。(試験自体は一次試験で行うものの、二次試験の一部として採点されます。)配点は全体の8/28です。
- 基礎能力試験(多肢選択式試験))
・I部(知能分野24問):
文章理解、数的処理、判断推理、資料解釈など。配点は全体の3/28です。
・II部(知識分野30問):
人文科学、社会科学、自然科学など。配点は全体の2/28です。
2.2 二次試験の概要
二次試験の合格者は、基礎能力試験も含めた全ての試験の点数によって決まります。
(なので、基礎能力試験は一次試験ではいわゆる「足切り」的な役割を担いつつも、最終合格者の決定においても重要な役割をもっている、という位置付けです。)
- 企画提案試験:一言で言うと、「資料読解+小論文+プレゼン」。事前に課題白書が与えられ、試験当日に渡された他の資料と合わせて、与えられた政策課題への対処策を小論文にまとめ、面接官(2人)の前でプレゼンテーションを行います。配点は全体の5/28です。
- 人物試験:いわゆる「面接」。面接カードに沿って、面接官(3人)による質問がなされ、それに対する回答を行います。配点は全体の6/28です。
- 政策討議試験:「グルディス」といわれるようなもの。6人のグループで、ある政策命題に対して、是か非かを決め、20分でレジュメ(A4くらいだったかな?)を作成し、その後、他の人のレジュメを読みながら40分ほど討議します。 配点は全体の4/28です。
これまでの配点を足すと、28/28になるはずです。これが「総合得点」さらに、これとは別に英語試験の加点というものがあります。
- 英語試験の加点:TOEFL,TOEIC,IELTS,英検などの点数に応じて,総合得点に+15点ないし+25点が加算されます(下記参照)。個人的におすすめはTOEICです(値段が安く、+25点が最も取りやすい気がします!英検も準1級をもっていれば良いのでお得感あります。)
- +15点ライン TOEFL(65以上80未満),TOEIC L&R(600以上730未満),IELTS(5.5以上6.5未満)
- +25点ライン TOEFL(80点以上),TOEIC L&R(730点以上),IELTS(6.5以上),英検準1級以上
↓ 配点、点数の計算式、合格者の決定法等の詳細は人事院の資料を見てください!
https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/jyukennannnai/jyukennannnai_kyouyoukubunn.pdf
2.3 おすすめする理由
まず、他の試験区分と比べて、政策立案について学べる試験です。行政官としての政策立案スキルを測ってくる試験であるため、試験対策をするだけでも、かなり鍛えられます。特に企画立案試験は、自分が考えた政策を現役行政官にプレゼンできる非常に貴重な機会です。
加えて,時期が他の区分・民間就活とズレるのでチャンスが増加します。ほかの専門区分と時期が被らないので,仮に落ちてしまったとしてもリスクヘッジが可能です。また,教養区分に合格すると(大学4年生・既卒生は直後の冬の官庁訪問をすることもできますが、)夏の官庁訪問までかなり時間的余裕が出来ます。私は,教養区分に受かることが出来たおかげで、かなり併願していた民間就活にも力を注げました。
最後に、受験料が無料です!(受けたことによる機会損失以外は)非常におトクな試験なのでぜひ受けてみてくださいね!
今年の締め切りですが…8月24日〆のようです!!!!
是非受けてみましょう(^^
3. 一次試験対策
3.1 総論
一次試験対策についてお話しましょう。
私の場合、以下のようなスケジュール感で対策をしました。
数か月前くらいから情報収集(試験の形式、科目など)を始め、
1か月前ほど前から知能問題に取り組み始めました。
2、3週間前から知識問題を詰めました(履修をしていなかった倫理政経を主に頑張りました)。
知能・知識の過去問演習(実際に時間を測って通しで知能問題を解いたり etc...)も2週間前ほどから始めました。
(手に入らない場合は「開示請求」をすることができるようです。外部サイトですが、ご参照ください。 https://hiiragi-yuya.com/kakomonnyuushuhouhou/)。
総合論文も2週間前程度から過去問を数問解き,知り合いの先輩に添削をお願いしたり,全然関係ない友達に読んでもらったりしました。
3.2作戦・計画
勉強をスタートする前に必ず作戦・計画を立てましょう。
2.1、2.2で各試験の配点や合格者の決定方法についてお話ししましたが、この辺がキーになってきます。(大学の試験などと異なり、)範囲が極めて広いため、限られた時間を何に使うかがキーになります。
まず、一次試験の突破について考えましょう。
先ほど述べたように、一次試験の合否は基礎能力試験(「知能」と「知識」の二つの科目)によってのみ決まります。
ここで、「知能」と「知識」の配点と問題数について考えてみましょう。
「知能」は24問で全体の3/28の重みがあるのに対して、「知識」は30問で全体の2/28の重みしかなく、「知能」の方が「知識」より1問あたり2倍近い重みがあります。
しかも「知識」の方は人文科学、社会科学、自然科学と…極めて膨大な範囲です(内容やレベルはセンター試験くらいと思っていただければ結構)。センター全科目分をもちろん復習しても結構なのですが、ほとんどの科目(世界史、日本史、物理、化学など)は2問ずつ程度しか出題されません。
なので、私は「知識」より「知能」の方に重点をおきました。
次に、二次試験の突破について考えましょう。
一次試験突破後の話は中編でお話しするので、ここでは一次試験前の段階で最終合格を見据えた時にどうすれば良いかに絞ります。
前述の通り、基礎能力試験(「知能」「知識」)は最終的な合否にも関わってくるので頑張ってください。
政策討議や人物試験の対策を一次試験前からやるのも結構なのですが、対策に膨大な時間がかかるわけではないので、合格発表後でも問題ないかと思います。特に政策討議は一次試験に臨む人たちと練習したほうが効率が良いです。
企画提案は、私の受験年の場合そもそも課題白書が公開されるのが 一次試験の合格発表後だったので、一時試験前に対策が出来ませんでした。
一次試験と同時に行われる総合論文試験については、当然のことながら一次試験前にしか対策が出来ないので、そうしましょう。配点も相当大きいので、一次試験突破に自信のある人は時間を割いてみても良いいかもしれません。ただ、全体的に差がつきにくい試験なので、あまり注力しすぎるのも微妙な気もします。
3.3 総合論文試験
二題課せられます。
一つは一般的なテーマ(「政策立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの」らしい)で、
もう一つは政策的なテーマ(「具体的な政策課題に関するもの」らしい)です。
私の受験した年の場合、前者は「母語の意義とは」というテーマで、後者は「今後の宇宙政策について」でした。
大変対策のしづらい試験ですし、一次試験の合否に関係ないということで正直対策の手を抜いてしまったのですが…しいて申し上げるなら,文章構成を意識しました。
例えば、政策テーマ型の問題に関しては、「総論→目標→現状分析・課題→方策→打ち手評価・まとめ」の順番に書く等。
- 総論:全部考え終わってから、全体をまとめます。最初にまとめを持ってくることで、試験官が読みやすい文章になります。
- 目標:最初に考えます。大体は問題文に書いてありますが、きちんと目標が何であるかを確認しないとペーパー全体が非常に的外れなものになってしまいます。
例:「消費税の反動減を平準化する」「少子化を改善する」
- 現状分析・課題:主に資料の読み込み、(知っていることがあれば知識等も出して)現状のまとめを行います。さらに、一番ネックになってそうなところをまとめるといいかもです。
- 方策:具体的な政策の方策を書いていきます。アイディアベースではなく、現状分析で特定した課題(ボトルネック)に刺さるものが良いでしょう。
- 打ち手評価・まとめ:上で出した方策のメリ/デメ衡量。「この政策は効果は高そうだけどコストがかかりそう」「この政策実現しやすそうだが効果が出るのに時間がかかりそうだね」...etc
おすすめ参考書:
こちらなどがメジャーでしょうか。
3.4 知能分野
個人的に一番対策すべき分野だと思います。事前対策では、主に判断推理に重点を置きました。
教材としては、スー過去や伊藤塾の教材(メルカリにて購入)を使用いたしました。
知能分野で最も大事なのが時間感覚ではないでしょうか。
非常に時間がない試験です。スピードを早くしつつ、問題を解く順番を意識しましょう。時間のなさを体感するためにもまず最初に一度通しで過去問を解いてみても良いかもしれません。
まずスピードについて。
知能試験は24題を120分で解くのですが、単純計算すると1問を5分で解く必要があります。これを解決するには、反復練習あるのみです。笑
私の場合、スー過去など知能の問題を解く時は必ずいつも時間を測って5分以内に終わるように解いていました。
また、120分もあるので、処理能力が徐々に低下していきますので、それを見越して簡単な問題は瞬殺できるようにしましょう。
次に気をつけるべきは解く順番です。より正答率の高い(かつ早く時終わる)問題から解くことで、(時間内の)全体としての得点率があがります。
私は、文章読解が得意で、資料解釈はある程度時間がかかるものの征討しやすいと感じたため、過去問の通し練習や本番では「文章理解→資料解釈→数的処理→判断推理」の順で解くようにしていました(自分の中で正答率が高い順)。
個々人によって解きやすい問題が違う上に、好みの順番もあるとおもうので、自分に一番合う順番を見つけてください。理数系が特に得意な人は数的・判断→資料解釈→文章理解みたいな解き方をしている人もいるようです。
また、順番に関連して、問題を捨てる勇気も持つと良いとおもいます。24問の中にも解ける問題と解けない問題があります。難しい問題に10分もかけている間に簡単な問題を処理できるかもしれません。問題を見て少し難しそうであれば後回しにするというのを身に付けておくと良いでしょう。この辺は過去問を通しで解く時に練習しましょう。
試験当日は、結果として6問ほど全く手を付けることができなかったのですが、文章理解、資料解釈を全部正答できたので、ある程度得点することができました。
(全く手を付けられなかった6題をすべて「3」と回答したのですが、すべて外れてしまいました。当たっていればもう少し良い順位で合格できたでしょう…笑笑)
おすすめ参考書:
3.5 知識分野
余りに範囲が膨大であるため,一部を除いて対策をせず、私はありのままの「教養」(笑)で臨みました
(ほぼすべての対策を諦めました。時間がたくさんある人はやってもいいと思います!!!!)。
逆に私が対策をした分野は,以下の二つです。「倫理政経」と「時事」です。
倫理政経に関しては,かなり密接に他の科目(社会科学・人文科学全般)と重なり合う部分が多く,学習すべき範囲が少ないので,費用対効果が非常に高かったからです。主に(胡散臭いタイトルで有名な)「センター試験 倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる本」を用いました。
時事に関しては,単に知識問題として出題されるのみならず,総合論文試験など,ほかの試験においても必要な知識であるからです。この二つは対策しておくことを強くお勧めします。超有名な「速攻の時事」を使いました。
おすすめ参考書
改訂第3版 センター試験 倫理、政治・経済の点数が面白いほどとれる本
- 作者: 奥村薫
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/07/14
- メディア: 単行本
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3.6 反省点
振り返ってみて、個人的な反省点としては、もっと早くから何が足りないかを知るべきだったという点です。
具体的には、知能問題は予想以上に時間がないことを知ったのが遅かったです。一度通しで時間を測って過去問を解くと、“時間感覚のヤバさ”を、身を以って知ることができるのですが、早い段階からこれをやればよかったです。
また、知識問題では、倫理政経の範囲がここまで多く出ることをあまり知らなかったので、最後の詰め込みの段階でだいぶ焦りました。
総合論文試験に関しては,かなり最終成績の中の配点が大きいので,もっと重視すべきだったかもしれません。(正直あまり点数がよくありませんでした。とはいえ、一次試験の合否には無関係の総合論文にがっつり時間を割くことができたかと聞かれると、私には少しリスキーな気がしたため、まあ仕方なかったのかもしれません。)
今回はこんな感じにしておきます。近日中に、後編(4.二次試験対策)をアップロードしたいと思います。
nageoroshiでした。